不良少年とキリスト

薔薇色ノ腐乱少女

その不思議なサウンドVol.1

 本シリーズ「その不思議なサウンド」では、最近入手した「極私的名盤」を備忘録として紹介します。即時性を優先している為、情報収集に不足があるかもしれません。もし、記載に誤りがあった場合、遠慮なくお申し付けください。因みに、「その不思議なサウンド」というシリーズ名は、先日再発されて大きな話題を呼んだ俗流アンビエントの大傑作『アロエ: その不思議なサウンド』から拝借しました。よしなにお願いします。

 

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滝沢淑行『アンジェリーク外伝4〜虹の記憶〜音楽集: 太陽の子守歌』(2001)

 コーエーが展開する女性向け恋愛ゲームシリーズのサントラ。M27を除いて全篇ニューエイジ色の濃いインスト曲が並ぶ。コンポーザーの滝沢淑行はネットで検索しても情報がほとんど見当たらない謎の人物。しかし、エスニック感溢れるM2、コズミックな和レアリックM12、ライトメロウM17、小久保隆を彷彿させるM23など聴きどころは多い。因みに、アンジェリークシリーズのキャラソン集が『オブスキュア・シティポップ・ディスクガイド』に掲載されており、そちらも併せて聴きたい。

 

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上田浩恵『Blew』 (1988) 

 1986年に〈Pony Canyon〉からデビューしたAOR系シンガーソングライターの2ndにしてラストアルバム。作家陣は吉田美奈子EPO岡田徹村松邦男崎谷健次郎など豪華な面々である。松村邦男によるアレンジが絶妙なアーバンブギーM4は特に洗練されている 。伸びやか且つどこか憂いを帯びた歌声が唯一無二。2004年からWhoopin名義でゴスペル歌手として活躍中だ。

 

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大野恭史『万引防止:  音楽萹』(1994)

 コンポーザーの大野恭史は、90年代に〈Victor Entertainment〉が展開した『マインド・コントロール・ミュージック』の膨大な作品群を手掛けたことで知られる。とりわけ異彩を放っているのが本作。全篇音数の少ないチープな打ち込み主体の所謂ジャスコテックである。早すぎたVaporwaveとしてニッチな音楽マニアを中心に近年注目を集めるBest Musicによる『Music For Supermarket』。しかし、本作は「架空のスーパーマーケットで流れるBGM」という同じコンセプトを持ちながら、そちらより13年早くリリースされているから驚きだ。因みに、本作はサブスクでも聴くことができる。

 

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Various Artists『あくまでラブコメ』(1992)

 〈Teichiku Records〉からリリースされた楠桂原作『あくまでラブコメ』のイメージアルバム。コンポーザー陣として木村賢一、鶴田海生という『オカルト・バージン: Sound Movie』『紅伝説』でその才能を発揮した名コンビが携わっている。鶴田海生作編曲による和モノの極北とも呼べるM6では、可愛らしいジャケットから想像しがたい不気味なサウンドが展開される。

 

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XPサイエンス『恋愛運』(2002?)

 獣医師、朝比奈征爾率いる超能力集団XPサイエンスが2002年頃に発表したサブリミナル系俗流アンビエント。本作の魅力はなんと言ってもその謳い文句だ。曰く、CDが回転することにより「超次元パワー」が発生する為、消音でも効果を期待できる。まさにアンタイレコードのような代物である。また、同アーティストはアニマルセラピー研究所名義でペットのオーラルケア効果を謳う『お口きれい』という作品もリリースしている。

 

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中山讓『天まで駆けるよ』(1994)

 ユズリンの愛称で親しまれる静岡出身のシンガーソングライターによる2ndアルバム。作詞作曲は柚梨太郎名義で本人が、アレンジは金井信、玉木孝治が手掛けている。本来は子どもたちに向けた作品だと思われるが、シティポップリスナーの琴線にも触れること間違いなし。ベストトラックM1では、大麻を吸った歌のおにいさんのような陽気さを味わえる。「どんな薬よりすごく効くんだよ…」という歌詞が忘れられない。

 

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小笠原ちあき『ちゃき・ちゃき・はうすのサウンド・カーニバル』(1988)

 1988年に〈Kitty Records〉からデビューした漫画家兼シンガーソングライターの1stアルバム。また、テレフォンインフォメーション「ちゃき・ちゃき・はうす」のイメージアルバムでもある。谷山浩子作詞作曲によるメルヘンナンバーM7に注目するかもしれない。しかし、ダンサンブルなブギーM2、都会の夜を疾走するようなM3、デジタルシティポップM5、先鋭的なアダルトロックM6など全篇にわたって佳曲が散見される。因みに、装画は同アーティストの従姉妹、成田美名子が担当している。

 

 さて、今回は以上になります。楽しんで頂けたでしょうか。本シリーズを読んで音楽に興味を持った方は是非、私たちと一緒に深淵なるレコードディグの旅へ出かけませんか?またお会いしましょう。